27日、北京から上海、奇跡の再会

 中国の雄大な風景が大好きで北京を旅した時、現地ガイドの宇さんと知り合った。流暢な日本語を話す彼はアルバイトで日本人旅行者のガイドをしているとのことだった。既婚者で妻と男の子の写真を見せてくれた。本職は不動産の営業マンで将来は自分の会社を立ち上げたいと目を輝かせた。上手な会話の中に彼の有能さを垣間見た。北京市内を見物中にもかかわらずあのマンションはお買い得だと数棟指をさす。私たちはマンションの下見や内覧会に来たのでないので彼のマシンガントークには閉口した。旅行最終日、空港まで送りに来た彼から北京市内の一等地にあるマンションのパンフレットをわたされた。抜け目のないことに、そこにはさまれていた本職の名刺に「私を通してくれたら1割引きにします」と走り書きがあった。思わず失笑。それから何度もメールをやり取りした3年後、上海を旅した。市内にある豫園を散策中、ただならぬ視線を感じた。用心しながら見回していると植込みの向こうに北京で知り合った宇さんがいた!再会の感激に大声を上げながら互いに駆け寄り人目もはばからず思わずハグしてしまった。会える確率は中国人口10数億分の一。まさに奇跡の再会だった。聞けば北京から上海に移り自分の会社を立ち上げたとか。真新しい名刺には「董事長」の肩書があった。社長として頑張っているようだった。しかしここ数年来、中国の不動産不況のせいかメールが途絶えてしまった。彼の安否が心配でならない。